メディアツアーこぼれ話
- 2月10日から21日まで、日米欧を移動しつつ行われたメディアツアーにおいて吉田Pが語ったものから、2つピックアップしたい。
旧FF14の反省と新生エオルゼアへの思い
- PC GAMERがアメリカでのインタビューの動画をYouTubeにアップロードしている。Webベースでの編集されたインタビューは多数あるが、(プロデューサーレターライブを除くと)生の言葉で語っている貴重なものなので、特に旧FF14を期待して購入したものの、その後前体制に呆れてスクウェア・エニックスを見限った人にぜひ見ていただきたい。
- 以下、聴きとった内容を元に言葉を整えたもの
- あの時なぜ旧FF14をあの状態で出したのか?
当時、スクウェア・エニックスは「ファイナルファンタジー」という名前におごっていたところがあった。またFF11の成功が大きかっただけに、FF14についても「この状態でスタートしてもアップデートしていけばプレイヤーはきっと付いてきてくれる」という甘えがあった。さらに、当時のグローバルスタンダードやメジャーMMOをあまりにも知らなさすぎ、チャレンジャーとしてのスピリットもハートもなかったんだと思う。
だからこそ僕はオープンになんでも話しをした上で、これでどうだろうと常にプレイヤーの皆さんに問いかけてるし、チャレンジしているつもりで作ってきている。そこはFF14だけではなくスクウェア・エニックス全体的に変わっていくべきところであるし、変わってきてると思うので、これからにぜひ期待してほしい。
- 新生で一番変えたポイント
ゲームデザインです。旧FF14はFF11のイメージを微妙に引き継いでいるところがあって、カレントジェネレーション(現行世代)のMMORPGのようなストーリードリヴンまたはクエストドリヴンなレベリングではなく、常に(フィールドの)モンスターと戦い続け、モンスターファーミングをしてモンスターキャンプをしなければレベリングができないゲームだった。これは現行世代のMMORPGのスタンダードからまったく外れている非常に古いゲームデザインだったので、そのゲームデザインをすべて捨て、すべて新しく作りなおした。
- 改修のポイント
2つ大きなポイントがあるとしたら、旧FF14はユーザーインターフェースが不可解であり、またすぐにダウンするサーバーだった。とくに、サーバーアーキテクチャーはMMORPGにとって「どんなゲーム体験をプレイヤーにしてもらうか」という上で、ものすごく大切であり、サーバーは安定してなければならないし、高速でなければならない。だからサーバーアーキテクチャーについてはゼロから作りなおした。
- 吉田PのMMORPG体験
今はギルドウォーズ2(GW2)に一番注目している。その他プレイしてきたMMORPGでは、ウルティマオンライン(UO)からスタートしてエバークエスト(EQ)、エバークエスト2(EQ2)、ワールドオブウォークラフト(WoW)、TERA、スターウォーズ:オールドリパブリック(SW:TOR)、Rift、そしてダークエイジオブキャメロット(DAoC)が一番長くて6年半プレイしてきたしメインだった。
- キャラクターデータの移行
レベルも思い出もつまっているキャラクターなので、基本的にはほぼすべてのアイテムに関してほぼ100%のデータが引き継げるように努力するのが、新生に関してのそもそもの僕らの役目だと思っており、98%くらいは引き継げる状態になっている。
- 旧FF14を見限った人への言葉
確かに根本が変わってしまうことにより、旧FF14(1.0)のほうが良かったと思われる部分も必ずあるとは思っている。お話をしたいのは、みなさんのおかげで僕らスクウェア・エニックスは世界を新生することができた。 「どうですか?」「面白いですか?」と聞きたいし、「面白い」といってもらえればすごくうれしいし、仮にもし「面白くない」といわれれば、これまで(新生に至るまでの2年間)がそうであったように、もう一度ちゃんと約束をして皆さんが面白く感じられるようにアップデートを続けていくのでぜひプレイして頂きたいということしか僕達にはできない。そのことをまっすぐに話をさせてもらおうと思っている。
- とくに最初の部分は、スクウェア・エニックスに期待し信頼していたプレイヤーを裏切ったことに対する真摯な反省となっている。要するにあの時の田中P初めとする開発陣はおごり、プレイヤーを舐めきっていたのだ。スクウェア・エニックス全体とは言わないが、少なくとも旧FF14開発陣のトップには、ゲームクリエイターとしての最低限のプライドもお客様に対して真剣に向かい合う気持ちも、なかった。
- その上、あの状態で出しておきながら「プレイヤーの期待が高すぎた」「あと3年、時間があればもう少しいいものを出せた」などと、期待していた人々の心を踏みにじるかのような言葉を口にしていたことがわかり、その結果坂口氏以降多数の先達が積み上げてきたファイナルファンタジーというブランドイメージは地に堕ちた。
- しかも明確な反省の弁もなく表面的な謝罪のみを残し、プロデューサーであった田中氏は去ってしまった。もしあの時、この言葉が前体制の口からでていれば、FF14が消費者からここまでの恨みを買うことはなかっただろうと思う。返す返す残念だ。
- ただ、インタビューでも語っているように現任の吉田プロデューサーは筋金入りのオンラインゲーマーであり、プレイヤーの気持ちというものを自らの体験として理解している。もちろん、前任田中プロデューサーが言い放ったように「MMORPGのプレイ経験が必ずしもいいゲームの開発に必要ではない」のかもしれない。しかし少なくとも「プレイヤーがなぜこのゲームを支持するのか?」という気持ちを理解していなければ、決していいものは作れない。その結果が旧(現行版)FF14であったことは田中氏も認めざるをえないだろう。
イラストレーター高橋和哉氏
- もう一つはgamer.ne.jpのインタビューに書かれている、新生のフリーカンパニーコンセプトアートに関する部分。
- FF14のイラストといえば吉田明彦氏があまりにも有名だ。FF14に興味を持った人の中にも氏の描き出す独特の世界観に惹かれたという人が多いのではないだろうか。
- しかし、もちろん吉田明彦氏だけがイラストを担当しているわけでもなくFF14には他のイラストレーターも多く参加しており、今回の高橋和哉氏もその一人。今回掲載された多くのインタビューのうち、gamer.ne.jpだけがこのコンセプトアートについて深く切り込んでいる。
吉田氏:あまり決めていないですね。ただ、こういったコンセプトアートには高橋和哉を起用していて、キャラクターをピンで描き、それらを集合させる絵作りのときには吉田明彦に描いてもらうことは多いです。
二人ともお互いにタッチを合わせようとしているので、そこで面白い効果も出ていますし、今回のイラストも、高橋和哉のサインを外したら吉田明彦って勘違いする人がたくさんいそうだなと思っています(笑)。高橋和哉はそれぐらい描ける人ですし、実は今まで公開してきたアートにも彼が描いたものも多数あります。勘違いされてかわいそうだったので、最近はアートにサインを書くように言っています(笑)。
――確かにタッチが似ていると感じました。
吉田氏:「旧FFXIV」のとき、冒険者ギルドをイメージした横長のアートを公開していたのですが、それも高橋和哉が描いています。正直パッケージに使うか悩むぐらいレベルの高い出来でしたし、僕も純粋に「ファイナルファンタジー」ファンとして彼の絵が好きですね。
――今回のアートをオーダーするときにやり取りしたことはありますか?
吉田氏:この絵に関しては暗さをかなり調整してもらいました。当初、左下の暗い部分の沈み方が極端だったので、あまり沈み込みすぎないように、二人で色のやり取りをしました。そのほかはすごく良く描いてもらって、「ファイナルファンタジー」のテーマカラーである青の印象もキッチリ入れてくれていました。
今回のアートのほかに、もうひとつリミットブレイクをテーマに新しいアートも描いてもらっていますが、そちらは動きで苦労しましたね。すでに描き終わっていますので、それも後日公開させていただく予定です。
- 今までも何度も吉田明彦氏と間違えられてきたことが多いことも触れられている。たとえば新生の種族装備シリーズイラストのうちミコッテ♂もそんな勘違いされたものの一つだが、これも高橋和哉氏によるもの。
- ※この他の種族装備シリーズも恐らく氏が描いているのではないかと思われるが、若干タッチが違っておりサインが入っていないのでわからない。
- 最近サイン入りのものが増えてきたのは、「勘違いされてかわいそうだったので、最近はアートにサインを書くように言っています(笑)。」という理由があったようだ。たしかに、事前情報がなくサインが入っていない状態で聞かれてもどちらの手によるものかが分かる人はかなり少ないのではないだろうか。
- コンセプトアートはまだゲームに触れていない人をも惹きつける大きな力があり、なおかつそのイラスト一枚で印象が大きく変わってしまうものでもある。特に最後の冒険者ギルドイラストについては、植松氏の音楽とともに初期のゲーム内情報がない状態のFF14に対するイメージを決定づけたとも言える一枚であり、このイラストに描き出されるあまりにも魅力的な雰囲気を夢見てFF14に深く興味を持ったプレイヤーも多かったのではないだろうか。※そのイメージと実際のインゲームとの大きな落差がさらに信頼喪失につながったことは皮肉すぎる。
- 今回、新生で導入される「フリーカンパニー」については未だに実像がよくわからない部分もあるが、改めてこのインタビューを読むことで、吉田Pがフリーカンパニーとそれによって紡ぎ出されるだろうゲーム内のつながりにこめようとしている想いが詰まっているように感じられる。
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